2025/07/10

日本医療政策学会への参加報告(池田)

6/28に都内で開催された日本医療政策学会に参加してきました。

本学会は、EBPM(Evidence-Based Policy Making)の推進を目的とし、医療政策の立案・評価におけるエビデンス活用の在り方について、政策立案者、研究者、臨床従事者等の多様な立場から議論を行う場として設立されました。

当日はアカデミア(教員・研究者)、大学院生、行政官、臨床現場の専門職、企業関係者など、多様なセクターからの参加が見られました。特別講演やシンポジウムでは、「日本の医療の未来に向けて / 日本の医療のグランドデザインを考える」と題し、少子高齢化が進行する中での周産期・小児医療の再編、高度医療の集約化の必要性とその現状等が議論されていました。

とりわけ印象的だったのは、現場、行政、研究者の三者間の構造的なギャップです。現場では採算性の低さや人材不足といった喫緊の課題に直面している一方で、行政の提示する政策には、必ずしも現場の実情が反映されていないとの認識が強いです。行政側は科学的根拠に基づく判断を求めていますが、研究成果の政策実装には時間を要し、スピード感の乖離が顕在化しています。このような構造的課題に対し、三者が共通言語で対話できる場の整備と、分野横断的な知見の融合が求められていると感じました。

さらに、7/4〜6に参加した日本小児救急医学会・小児集中治療ワークショップにおいても、医療インフラとしての小児・周産期・救急医療の将来像に関して、医療者不足や地域偏在といった共通の課題が指摘されていました。これらの議論を通じて、医療政策形成においては一方向の施策提案ではなく、構造的背景を踏まえた多層的な対話が不可欠であると改めて認識しました。

今後、臨床現場・アカデミア・政策立案機関がそれぞれの役割と限界を理解し合い、相互補完的に協働していくことが、持続可能な医療提供体制の構築に不可欠と言えます。今回の参加を通じて、今後の研究者としての自身の立ち位置や、臨床と政策をつなぐ視点の重要性を再確認する機会となりました。

修士2年 池田光輝(小児集中治療室 看護師/救急集中治療医学 博士課程・MPH 修士課程 在籍)